Miki Soejima

    はじめに Introduction

    ナチュラルスクールランチアクション(以下NSLA)は、学校給食に地元産のオーガニック食材などエシカル*1な食材を取り入れることで、子どもたちの健康や環境保護に貢献する活動をする団体です。

    私一人から始まった活動は、今ではその理念とやり方に共感してくれるお母さんが全国で約260名、40団体となり、各地域で熱心に活動しています。

    任意団体として2019年12月に活動を開始して僅か3年ですが、NSLAが関係した自治体で2021年度には4市、2022年度には7市がオーガニック*2給食の実現にいたりました。

    NSLAは名前の通り、自然にも人間にも優しい給食を目指し、給食を通じて想いを社会に市政にと反映していきたい、我が子だけではなく多くの子ども達に良いものを食べさせたい、環境保護をしたい、と行動する愛に溢れたお母さんで構成されています。

    私が活動を始めたのは2011年3月の原発事故がきっかけでした。
    その時長男が4歳(食物アレルギー&アトピー)、次男が2歳でした。
    2012年6月より2019年12月までの7年半、毎月給食センターで情報交換会をしていただきました。
    実際にお話をしてみると、SNSで書かれていたことやよく言われること(給食は悪い。給食は変えられない)とは違っていて、給食をより良くしたいと願わない方は一人もいませんでした。
    理解し合うのに時間はかかりましたが、行政の方々も想いを受け取ってくださり少しずつ給食は変わっていきました。
    何より給食センターで毎月交流した時間がとても楽しく幸せな気持ちになったことがNSLAを創る土台となりました。
    また給食センターでの経験から人の心にも優しいNSLAメソッドが構築されたのです。
    (2023年IFOAM asia 第6回オーガニックアジア国際会議にてNSLAメソッドを論文発表)

    課題 Issue

    2021年にあま市産有機人参が給食で提供されました。あま市産有機人参は、農薬や化学肥料を使わずに栽培された安全で美味しい野菜です。
    給食でこの人参に出会い、食べることで、子どもたちがオーガニックの味や価値を知り、地元農家さんを応援する気持ちが芽生えるよう働きかけをしましたが、その時地場産オーガニック給食が今後広がるための多くの課題が見えました。

    その課題を解決するには任意団体ではどうしても難しい部分があったことがNPOを立ち上げた理由です。

    私が考える今後の課題とは
    ・地産有機食材のシェア
    ・オーガニックの保証や認証
    ・オーガニックに対応した給食システム
    ・エシカルな食材への理解(啓蒙)

    真っ先に思い浮かぶ『価格』『気候変動』の課題は以上のこれらが解決できれば自ずとアプローチできると考えています。

    それぞれの地元でこれらの課題を解決していくことが、気づいた私たち大人の使命です。
    『みどりの食料システム戦略法*3』の施行によって今後更にオーガニック給食を取り組む自治体はじわじわと増えていくことが予測されます。ですが現在の日本では有機JAS認証を取得したもののみが『オーガニック』『有機』と認められており、同じように農薬や化学肥料を使わない栽培方法はオーガニックとは表示すらできません。日本で『オーガニック』『有機』は日本国内農地の0.3%しかありません。有機JAS認証を取得していないけれど同等の栽培をしている農地を合わせると0.6%と言われています。

    そこで世界のオーガニック基準を作ったと言われるドイツIFOAM*4へ申請をし『もう一つのオーガニック』を日本で創り出そうと考えました。
    それがPGS*5(参加型認証制度)です。

    PGSが掲げる理念『6 key elements』 がNSLAの大切にしてきた対話や対等性などとてもよく似ていたこと、また紛争地域ではこのPGSがされていないこと、すなわち平和な地域が創られていくのがPGSだということに私は強く感銘を受けました。
    また日本ではこのPGSはまだオーガニック認証として認められていませんが、世界ではPGSを10カ国がオーガニック認証として認めていることもあり、国際レベルで保証されていることが未知の領域へ勇気を出し取り組みたいと熱く思ったポイントでした。

    現在、NSLAではオーガニック農家さんたちと協力して『NSLAママ認証』の準備を進めています。
    この認証制度がエシカル給食や有機農業の推進への新しい風となることを願い、尽力しています。

    目的地 Goal

    私の想い描くGOALは… 

    *子どもたちが大人になったとき、少し高くても地元のオーガニックやエシカルな食材を選んで、地域の経済を応援できる人になってくれること。

    *子どもたちが結婚し子どもが生まれた時、給食が当たり前にほぼ地元産オーガニックになっていること。

    *全国どこのスーパーでも気軽に当たり前に地元農家のオーガニック野菜や伝統的な調味料などが購入できること。

    *子どもたちやエシカル給食に関わった人たちが 地域社会や世界のこと、地球環境のことを自分のこととして考えて、行動に移せる人になってくれること。

    *優しい行動をする人が増えること。

    最後に Conclusion

    人間の心と体は食べ物でできています。
    その大切な食を通じて、子ども達が未来に希望を持ち、あんな大人になりたい!あんな大人と一緒に優しい社会を創りたい!地球環境を良くしていきたい!と思ってもらえることを私たちNPOの目標として、楽しく真っ直ぐに進んでいこうと思います。

    私は12年この給食活動に人生を捧げてきましたが、この度子ども達への想いが確実に形になっていき、持続していくようにと立ち上げたNPOです。
    ありがたい事に同じ想いの仲間達(現在正会員20名)に恵まれ共に歩んでいく事になりました。

    私たちの想いを共有し、共に活動してくれる方々とともに、子どもたちと地球の未来を守るために、積極的に取り組んでいきます。
    私たちの小さな一歩が、大きな未来をつくるためのきっかけとなることを願っています。

    私たちNPOは、皆さんからのご支援やご協力を心からお待ちしています。一緒に子どもたちと地球の未来を守りましょう!

    理事長 副島美貴

    *1 エシカル
      エシカルとは「道徳・倫理」という意味を表す言葉です。エシカルは、環境への配慮を表す「エコ」や健康で持続可能な、またこれを重視する生活様式という意味を持つ「ロハス」といった言葉の持つ範囲をさらに広げて、環境、労働など各種社会問題を表す意味で使用されています。

    *2 オーガニック
      有機栽培に同じ。化学合成農薬や化学肥料に頼らず、土壌の持つ力を活かして環境への負荷をできる限り少なくする農法のこと。

    *3 みどりの食料システム戦略法
      2022年施行された法律で、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定め、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図るものです。

    *4 IFOAM
      国際有機農業運動連合。有機農業の振興のために活動する世界規模の NGO であり、有機農業の基準に ついてのガイドラインを示したり(有機JAS認証の基準もこれに基づいている)、有機農業に関する様々な普及活動を行っている

    *5 PGS
      参加型認証制度。地域に焦点を当てた品質保証システムであり、信頼、社会的なネットワーク、知識の交換の 基盤の上に、関係者の積極的な参加活動に基づいて、生産者を認証する。